2026/10/27
『ラヴクラフト全集I』を読み終えた。最初の『インスマウスの影』だけ読んで数ヶ月ほったらかしていたのだが、タイミングを変えると急に読み進められた。作中に、白い大きなテーブルクロスの前で一人で食事をしている光景が出てきた。訳者のあとがきによれば、それは「ラヴクラフトの寂寞たる日常生活」を象徴するものであり、その寂しさを紛らわせるために彼は小説を書いた、と述べていた。ギクッとした。そんな絵を2ヶ月前に描いていたから。
AIが走り回るためのグラウンド整備みたいな仕事が多い。それが人類最後の仕事かもしれない。研究室のクラスタにAnsibleやslurmを入れたり、ローカルLLMを立ち上げたりしている。昔のベンチャーバイトでやっていたこととか繋がりがLinkedIn経由で掘り起こされて、声がかかってお茶したりしている。自分で働く気はないけど、誰を紹介できるというわけでもないのでちょっと困っている。いまの学部生はどういうところでアルバイトするんだろう?
新しい会社作って、それでマーケット狙って、それがどういうふうにおもしろいんだろうか。アプリ系の起業だと「自分がほしいから作った」というのがあるが、大学に入ってからは対象となる課題の市場規模からちゃんとビジネス的に考えているケースを多く見る。自身ではなく社会にとって重要な課題へとフォーカスしている。それでやる気出るんだなーと思って見ている。そういう人たちの話を聞いたり、コーヒーをおごってもらったりするのは楽しい。もちろん彼らは彼らで、黒い画面と向き合ってサーバのケーブルを抜き差しすることの何がおもしろいんだろう、と思っているかもしれない。
内定式があった。カメラが回っていて、周囲のスクリーンに会場が映し出されている。ただの会議室なのにこんなにスクリーン要らないんじゃないか。カメラがズームアウトして会場全体が映り、グリッドに並んだスーツが映る。うわー。俺もいる。
式典というよりは交流会だった。大陸を縦断したバックパッカーがいた。一方俺はというと、隅田川周辺の河川敷と地域の区立図書館を移動しまくっている話をした。ずいぶんスケールが小さい。ありえないぐらい鼻水が出ていたのと、人と話すのに疲れたので飲み会には行かず直帰した。
残り少ない学生時代をめいっぱい楽しんで、とはいうが…。楽しいことってなんだろう?時間がなくなっていくのが怖い。
おそらく大学最後の(100%修了できる自信がない — 誰にもない!)、あるいは人生最後の学期である。講義はほとんど取らなくていいのだが、エネルギー関連のやつと、あとはレーモン・クノー『文体練習』の翻訳の講義に出ている。別にいつやめてもいい。
大学はもっと違うことやってもよかったかもしれない…。お金があればだいたいのことはなんとかなる、まず手に職、役に立ちそうなことをするという傾向から結局逃れることはなかった。我々の世代であればゲームじゃなくてプログラミングなら家族に悪い顔をされずに、あるいはその価値観を内面化している場合は自分でも罪悪感をもたずに取り組めた人というのは案外存在するんじゃないだろうか。
あまり自信がなくて試行錯誤をしなかった結果、所属的には電気情報工学科→電子情報工学科→電気系工学専攻→電力関連というめちゃくちゃつまらない感じになるが、致し方ない。何によってかはわからない(趣味か社交か、あるいは仕事そのものか)が、なんとかしてもっとおもしろくならんかなーと天井を眺めている。
生活のステップ数が多い。何かをすると何かを忘れる。いつまで経っても覚えられない。todoリストを作ってもめんどくさいので見たり見なかったりして全体的には60点で進んでいる。歯磨きの習慣が弱い。夜はいいのだがとにかく朝はしょっちゅう忘れる。先月はホテルでもらった10mL程度の小さいやつが貯まりすぎたので、そいつらを消費していた。すぐ使いきれて気分がよかった。楽しいとか気分がいいとかそういう情緒的なアプローチが必要かもしれなかった。
銀座のロフトに吸い込まれた。文具は使い切れないけど、商品のカテゴリをずらすと何かおもしろいものあるかな?と思ってしまう。消費(≠ 浪費)が居場所を見つけようとしている。SALTRAINという歯磨き粉を買った。ほぼパケ買い。シンプルでよい。塩が入っていてうまい。自分で物を選んで買うとどうしても白・黒・青色ばかりを選んでしまう。対して家具についてはニトリが「木のあたたかみ」信仰を持っているおかげで、大多数は茶色の木目を表面に持っている。中身は木材の切れ端を繊維にして固め直した板にすぎない。
味とパッケージはおもしろいが、フッ素フリーなので虫歯予防効果はない。一般に、先に添加物が発明されて、その数年後に、それへのカウンターとして添加物フリーの商品が出る。しかし歯磨き粉の場合は「フッ素配合」と「フッ素フリー」がそれぞれのセールスポイントとして現在時点で隣り合って売られている。フッ素フリーと書くと聞こえがいいので不思議だ。そもそもフッ素ではなくてフッ化物と書くべきではないか?
部屋の汚さと気分の悪さは両者とも波であって、しかも相関がある。どちらかがよくなるともう一方もじきによくなる。どちらかが悪くなるともう一方もじきに悪くなる。一気に片づけて一気にスッキリというわけにはいかない。いわばこの二つは自動車のシャーシで繋がれた4つのタイヤの左半分と右半分であって、どちらかを一気に前進させても前には進んでいかない。暗い気持ちで回らない頭のまま少しずつ自明なところから片づけて、徐々にマシになる部屋を見る自分が少しずつ気分を取り戻す。あるいは起床直後など気分がマシになったときに、その気分にシンクロさせるように部屋の状態を取り戻す。
東大総長が決まった。結果についていえば、新総長の藤垣教授の専門は科学技術社会論(STS)で、筋は悪くないと感じる。二回連続で工学系から出すのも微妙だし、別の分野の専門家連れてきたほうがガバナンスには良いんじゃない?とか。プロセスについては国立大学法人化以降の文科省の息がかかった経営体(総長選考会議)に教授会組織(意向選挙)が負けてるとも読める。…とか言ってたら文科省からも選考結果に文句が出ているようで不思議だ。意向選挙については、教員数からして単純な投票では工学系が有利すぎるので、票差にそこまで意味があるとは思わない。
染谷教授は自分が編入したときの工学部長だった。会議室で開かれたオリエンテーションで、なんか10分ぐらい喋ってどっか別の仕事に行ったのを覚えている。そういえば前回も立候補して藤井教授に負けてたよな。どういう理由で立候補しているのか謎だが、自身が総長をやりたいのは本当のことらしい。
一般的な性差別/女性活躍の問題についていえば、女子枠とか性別に関するaffirmative actionとかどんどんやればいいじゃん、と思っている。多様な学生を取ってみて一時的に優秀さが下がるのはそりゃしょうがない。そもそもの優秀さの定義が変わっていく。あんまちゃんと調べてないので自分の主義であるが。
天気が悪いといろいろ思い出してしまうもので、留学先の数学の試験の時にスマホのアラームが鳴りまくって、何回もカバン開けさせてもらって止めたのにまた鳴ってパニックになったの思い出してつらくなった。試験終わってから俺がもそもそ飯食ってると, 先生が部屋に入ってきてare you good?って聞いてきたんだよなー。で、その翌日にスーツケース持ってきてアレコレ片付けしてるときに、俺はこんな大学いるべきではなかったよなーとか大変情けない気持ちになっていた。暗くなっている自分を見てもっと暗くなる。暗くなっている自分を見ている自分を見てもっと暗くなる。そうやってそれぞれの超自我が一つ下の自我が受けている半分のダメージを食らうとすれば、全体では 倍のダメージになる…